村がないけど玉座はある時のコンボについて
ヒロタシさん(@hirotashi)がTwitterで募集をかけた(?)「とりあえず振られたテーマについて記事を書く」という企画に参加しました。
特に内容について指定もないまま、書いてもいいよって手を挙げた人に「じゃあお前は○○について書け」と振ってみよう。
— ヒロタシ (@hirotashi) 2018年5月21日
書いてもいいよって人はこのツイートにいいねしてください。
@AuToPP 「村がないけど玉座はある時のコンボ」についてお願いします。
— ヒロタシ (@hirotashi) 2018年5月22日
この記事のテーマは「村がないけど玉座はある時のコンボ」になります。予想以上に難しいテーマを振られましたが、まずは基本のおさらいから。
「村はないけど玉座はある時のコンボ」とは
ドミニオンにおけるコンボをどう定義するかは難しいが、+アクションが付かないターミナルアクションカードを1ターンに複数枚プレイすることを意図したデッキはコンボと称されることが多いだろう。 ドミニオンを初めて間もないプレイヤーは「ターミナルアクションを複数枚プレイするためには村(≒ +2アクションを生み出すカード)が必要」と考えてることが多いが、村がなくても玉座の間があれば似たようなことができる。
例えば玉座の間・研究所とプレイすると+4ドローに加えて+2アクションが付く。研究所を2枚プレイするのと同じと思いきや
- 研究所よりも安い玉座の間で同じドロー枚数
- アクションが1増加
と、大変お得な結果。つまり市場や研究所のような+1アクション・+1カード以上のカードが玉座の間によって村になり、プレイするターミナルアクション枚数を増やすコンボとなる。
また、+1アクションすら出ない場合でも、玉座の間を重ねがけすればターミナルアクションのプレイ枚数が増える。例えば玉座の間・鍛冶屋とプレイすると、6枚引いてアクション終了。しかし玉座の間・玉座の間・鍛冶屋とプレイすれば6枚引いた後に、もう1枚アクションカードを(しかも2回分)プレイできる。ここで再び玉座の間・鍛冶屋と選択すれば、引き切りも見えてくるだろう。
これを活用した1ターンキルレシピとしては玉座の間・執事・橋がある。また、宮廷・宮廷・宮廷・橋・橋のビッグブリッジや、玉座の間・玉座の間・ゴミあさり・ゴミあさりの永久ループなどはドローこそしないものの重ねると強力なターミナルアクションを複数枚プレイする強力な玉座の間コンボと言える。
ここまでは木ドミが出した名書ドミニオンマニアックスでも「玉座の間研究」という節でより丁寧に解説されている。これを踏まえて更に以下についても考えてみる。
- 玉座の間以外の玉座の間コンボ
- 玉座の間コンボを始動するために必要な確率
玉座の間以外の玉座の間
宮廷
玉座の間で強くなるコンボなら、宮廷ではもっと強い。玉座の間と+1ドローとするだけでも手札枚数が1枚増える。宮廷以外のアクションカードを引かない可能性は玉座の間と同じなので、リターンの大きさと宮廷の獲得機会を天秤にかけて考えたいところ。
行進
2回プレイするものの、玉座の間とは効果も考えるべきことが違いすぎて完全に別物。爆発するシチュエーションはいくつかあるが、とりわけ廃棄時効果を持つアクションカードがある時には注意したい。
門下生
門下生があるということは教師もある。+1アクショントークンを置く先の典型例が+アクションが付かないドローカード。そしてそのトークンを載せて強化したカードを集める手段として、農民2枚目を門下生まで育てておくパターンが多い。
御料車
+1アクションを出すカードがある場合、同時に手札になくてもいいという点で玉座の間よりも活用しやすい。 一方、ターミナルアクションしかない場合は、ターミナルアクションを重ねた後に別のアクションをプレイできないため、玉座の間を重ねてアクションを繋げるコンボはできない。
ただし、1枚のカードに対して同時に複数回適用することができるので、プレイ回数が多いと強くなるカードとは相性がいい。 極端な例として、橋が1枚だけプレイしてから御料車を7枚コールすれば属州がタダになるビッグブリッジの完成である。
冠
基本的にはちょっと高いだけだがコンボとしてはほぼ玉座の間と同じ。手札に玉座の間/冠が2枚以上と研究所や市場などの+1アクションが付くカードがある場合、玉座の間なら思考停止で重ねがけしても概ね問題ないが、冠だと余った分を財宝カードに適用することができるので、思考停止で重ねがけしない方がいいことも。
幽霊
使用タイミングがアクションフェイズでなければ、適用するカードも手札ではなく山札から選出されるので、これもだいぶ別物。引ききったターンに幽霊をプレイする場合、購入フェイズ以降に獲得したアクションカードが確定で対象となることは忘れないでおきたい。
玉座コンボを開始するために必要な確率
冒頭では「研究所2枚プレイより玉座の間・研究所プレイの方がお得」と書いたが、そのメリットを享受するためには払うべき対価がある。ドロー運である。
「玉座の間・研究所をプレイ」するためには、その2枚が同時に手札にないといけない。これは研究所がもう1枚の研究所を引いたり、村で鍛冶屋を引いてプレイするのと比べると幾分か確率が下がる。もちろんm+1アクションすらなく、玉座の間2枚とターミナルアクションを組み合わる場合は更に確率が下がる。
つまり、玉座の間もそれ以外のアクションカードもしっかり集め、さあ勝利点カードを買っていくぞという大事な局面で↓のようなターン開始を迎えると目も当てられない。
このような玉座事故は他のアクションよりもダメージがでかい。これが玉座の間ではなく、例えば鍛冶屋なら仮に村が引けなかったとしてもプレイして財宝を1枚でも引ければとりあえず銅貨以上の働きはしたことになる。しかし、玉座の間はプレイすらできず呪い以上銅貨未満のゴミと化すことになってしまう。
ターン開始時の手札5枚で玉座事故を起こす確率の計算は以下の3つのパラメータに分解できる:
- T: 玉座の間の枚数
- A: 玉座の間を適用したい玉座の間以外のアクションカードの枚数
- O: 上記以外のカード(勝利点、財宝、ドローを終えてから使いたいアクションなど)の枚数
3つのパラメータのうちTとAは概ね自分で制御できるが、Oはどれくらい圧縮ができるサプライなのかによって変わってくる。Oが10の場合と4の場合について見てみよう。
O = 10の場合
金貸しや改築などで初期デッキの一部を廃棄しつつ財宝やドローのないターミナルアクションを入れてる状況を想定。
↓の表は縦軸が「玉座の間の枚数」、横軸が「玉座の間を適用したい玉座の間以外のアクションカードの枚数」で、各項目は「手札5枚が玉座の間とアクションカード以外になる確率/手札5枚に玉座の2枚とアクションカードが揃う確率」となっている。
T\A | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 26.5/0.0 | 16.3/0.0 | 10.5/0.0 | 7.0/0.0 | 4.8/0.0 | 3.4/0.0 | 2.5/0.0 | 1.8/0.0 | 1.4/0.0 | 1.0/0.0 |
2 | 42.0/3.5 | 27.0/5.0 | 18.0/5.5 | 12.4/5.6 | 8.7/5.4 | 6.3/5.1 | 4.6/4.8 | 3.5/4.5 | 2.7/4.2 | 2.1/3.9 |
3 | 51.7/7.2 | 34.5/10.7 | 23.7/12.2 | 16.7/12.6 | 12.1/12.4 | 8.9/12.0 | 6.7/11.4 | 5.1/10.8 | 3.9/10.2 | 3.1/9.5 |
4 | 58.3/10.4 | 40.1/15.7 | 28.3/18.3 | 20.4/19.3 | 15.0/19.4 | 11.3/19.0 | 8.6/18.3 | 6.6/17.5 | 5.2/16.7 | 4.1/15.8 |
5 | 63.0/12.7 | 44.5/19.7 | 32.1/23.4 | 23.7/25.1 | 17.7/25.6 | 13.5/25.5 | 10.4/24.9 | 8.2/24.0 | 6.5/23.0 | 5.2/22.0 |
6 | 66.5/14.4 | 48.0/22.8 | 35.4/27.5 | 26.5/29.9 | 20.2/31.0 | 15.6/31.1 | 12.2/30.7 | 9.7/29.9 | 7.7/29.0 | 6.3/27.9 |
7 | 69.3/15.5 | 51.0/25.0 | 38.3/30.6 | 29.2/33.8 | 22.5/35.4 | 17.6/35.9 | 14.0/35.7 | 11.2/35.2 | 9.0/34.3 | 7.4/33.3 |
8 | 71.5/16.3 | 53.6/26.5 | 40.9/33.0 | 31.6/36.8 | 24.7/38.9 | 19.6/39.9 | 15.7/40.0 | 12.6/39.7 | 10.3/39.0 | 8.5/38.0 |
9 | 73.4/16.7 | 55.9/27.6 | 43.2/34.7 | 33.8/39.1 | 26.8/41.7 | 21.4/43.1 | 17.3/43.6 | 14.1/43.5 | 11.6/43.0 | 9.6/42.2 |
10 | 75.0/16.9 | 57.9/28.3 | 45.3/35.8 | 35.9/40.8 | 28.7/43.9 | 23.2/45.7 | 18.9/46.6 | 15.5/46.8 | 12.8/46.5 | 10.7/45.9 |
例えば A = 1(アクションカードが1枚だけ)の時に玉座の間を1枚入れると26.5%の確率で事故る。アクションカードを3枚以上入れてから玉座の間を入れ始めるのが事故回避の観点ではよさそうに見える。
現実的なデッキ構成として考えられるTが3-5くらいでAがT+1の場合を見てみると、玉座事故の確率は20%を切っている。
一方、玉座2枚とアクションが揃う確率が50%を超えることはない。やはり、この3枚が揃わないと困るようなコンボはある程度圧縮ができないと現実的ではないことがわかる。
O = 4の場合
次に初期デッキの圧縮が十分にでき、金貨以上の財宝や民兵などのアクションしか無い状況を想定。
T\A | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 16.7/0.0 | 4.8/0.0 | 1.8/0.0 | 0.8/0.0 | 0.4/0.0 | 0.2/0.0 | 0.1/0.0 | 0.1/0.0 | 0.0/0.0 | 0.0/0.0 |
2 | 28.6/28.6 | 10.7/28.6 | 4.8/24.6 | 2.4/20.6 | 1.3/17.3 | 0.8/14.6 | 0.5/12.5 | 0.3/10.8 | 0.2/9.4 | 0.1/8.2 |
3 | 37.5/39.3 | 16.7/45.2 | 8.3/42.9 | 4.5/38.5 | 2.7/34.1 | 1.6/30.1 | 1.0/26.6 | 0.7/23.6 | 0.5/21.0 | 0.3/18.8 |
4 | 44.4/42.1 | 22.2/53.2 | 12.1/53.9 | 7.1/51.0 | 4.4/47.0 | 2.8/42.9 | 1.9/38.9 | 1.3/35.3 | 0.9/32.1 | 0.7/29.3 |
5 | 50.0/41.7 | 27.3/56.3 | 15.9/60.0 | 9.8/59.1 | 6.3/56.2 | 4.2/52.6 | 2.9/48.9 | 2.0/45.2 | 1.5/41.8 | 1.1/38.7 |
6 | 54.5/40.0 | 31.8/56.8 | 19.6/62.9 | 12.6/63.9 | 8.4/62.4 | 5.8/59.8 | 4.1/56.6 | 2.9/53.2 | 2.2/49.9 | 1.6/46.8 |
7 | 58.3/38.0 | 35.9/56.0 | 23.1/64.0 | 15.4/66.7 | 10.6/66.5 | 7.5/64.8 | 5.4/62.3 | 4.0/59.5 | 3.0/56.5 | 2.3/53.5 |
8 | 61.5/35.9 | 39.6/54.5 | 26.4/63.9 | 18.1/67.9 | 12.8/69.0 | 9.2/68.3 | 6.8/66.6 | 5.1/64.3 | 3.9/61.7 | 3.0/59.0 |
9 | 64.3/33.9 | 42.9/52.7 | 29.5/63.0 | 20.8/68.3 | 15.0/70.4 | 11.1/70.6 | 8.3/69.6 | 6.3/67.9 | 4.9/65.8 | 3.8/63.5 |
10 | 66.7/32.0 | 45.8/50.8 | 32.4/61.8 | 23.4/67.9 | 17.2/70.9 | 12.9/72.0 | 9.8/71.7 | 7.6/70.6 | 5.9/69.0 | 4.7/67.1 |
さっきと比べるとだいぶ事故率は下がる。玉座の間が4枚・アクションが5枚の構成で肝心なタイミングで玉座事故が起きたとしたら流石に不運だったといえるだろう。+1アクションが出ない玉座の間・玉座の間・アクションから始めるコンボも、こちらならだいぶ目があるだろう。(それでも毎ターン行うなら別のアシストは欲しいが……)
このケースで注目したいの T = 6, A = 3 の時の玉座2枚とアクション1枚が揃う確率が62.9%ということ。これはドミニオンマニアックスの「玉座の間研究」でも紹介されている玉座の間・執事・橋コンボデッキが完成してから、始動するために必要な手札を引ける確率である。完成さえすれば運が悪くなければ2ターン以内には発動できるだろう。
表を見るとA(= 執事の枚数)が4の方が始動できる確率はわずかに高いが、ドローしないといけない枚数も増えてしまう。ということで玉座の間・執事・橋コンボの6枚・3枚・4枚という構成は確率的にも最適であることがよくわかる。
ここまで書いておいてなんだが、ドミニオンの目的は必ずしも「事故らないデッキを作る」ことではないし、最適な玉座の間やその他のアクションの枚数構成は目指す最終形によって変わる。ここで挙げた確率は、デッキ構築の目安にするというよりは、実際に玉座事故を起こした際に「その事故がどれくらいの確率だったのか」を確認するため程度に留めた方がいいだろう。
なお他のパターンが気になる場合はこちらで検証することができます(3つのパラメータに加えて手札枚数も変更可能)。
https://autopp.github.io/human-power-for-throne-room
おわりに
途中から「村がないけど」とは関係なく玉座の間単体の考察になってしまった気がするし、確率についても探せばすでに同じことやってる記事が出てきそうな気もする。が、自分が気になっていた確率について、これを機に数値化して確認できたのでとりあえずよかったことにする。
最後にこの企画そのものについて。ヒロタシさんはこの企画を始める前にこのようなTweetをしている
ドミニオンマニアックスZEROで書いたビッグブリッヂの記事、別に自分から書きたいって言ったわけでも普段から得意としていたわけでもなく、ただ記事の割り振りとして「お前はビッグブリッヂを書け」「ウイっす」って引き受けただけなのだけど(続く
— ヒロタシ (@hirotashi) 2018年5月21日
書き出してみると不思議なことに書くことで自分の中で手順が整理された結果ビッグブリッヂができるようになったのでした。
— ヒロタシ (@hirotashi) 2018年5月21日
だからドミブログ持ちの人たちに、書きたいとか得意とか言ってなくても「これについて書け」って言って書かせたらいいのかも知れない。
これは何もドミニオンに限った話ではなく、アウトプットの必要が迫られた時こそもっとも知識の整理・洗練ができるという話だと思う。ゲームにしろそれ以外にしろ、臆せずにもっとアウトプットを増やしていきたいもんです。